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グリーンニューディールと労働の終焉の始まり

いくら文章をかいても、心無いコメントの方がおおいのでしばらく凹んでました。もともと小心な性質なので、そんなに、人の心を傷つける文章を書いていただろうかとちょっと悩みました。それが、嫌がらせをしている人の狙い通りであることも。そういう心労をおしてもヨタ話にしかならないかもしれないようなことを言いつけることに価値があるのかとも。でも、少数のコメントで日本語の分るすべての人に失望して、語ることをやめるのは意味がない。嫌がらせを続けていらっしゃる方には、まっとうに議論をするためのコメントで説得する以外にはこのブログを閉じさせることは出来ませんと、申し上げておきます。他の方が読んで不快になるようなコメントは表示できませんが、問題のある箇所を具体的に示して議論なさろうとする分には、私はあなたを無視したりはしません。

個人的な話はさておき、空前といわれる景気循環の大波がやってきて、救世主然とオバマが大統領に選ばれました。多くの機会でグリーンニューディールについて語られるようになってきました。多くの投資が太陽光発電、風力発電、水力発電などのベンチャーに為され、世界中でリニューアブル・エネルギーへの一大転換が始まるでしょう。EUはロシアの資源を背景にした圧力を嫌って、自前のエネルギーを確保したいという思惑があるでしょうし、今の太陽電池生産量の世界的な伸びと投資資金の流入を考えれば、不況を脱しようとする死に物狂いの動きと相俟って、相当な勢いで次のバブルとしてのグリーンバブルのギャンブルが始まることは必定です。

しかし、それは当然現行の多くのシステムの入れ替えを要求することになるでしょう。石油をエネルギー源とするぶつかれば爆発する自動車は、損壊しても爆発しない電気自動車に入れ替わるでしょう。それに関して最近の動きといえばNEDOがロボット自動車の開発を進めるというニュースでしょうか。今年日本で与党になるであろう民主党はアメリカよりも、EU寄りの政党です。いままで世界は石油=バイオエタノール=アメリカを中心に回ってきましたが、これからはどうも排出権取引=リニューアブルエネルギー=EUに流れが変わりつつあるようです。

これから起こるグリーンバブルで世界は不況から脱出するでしょう。リニューアブルエネルギーの発電機器はコモディティー化しエネルギーはグリッドされ、ゆくゆくは世界のエネルギーはほとんど無料になるでしょう。しかし、その間、ロボットを動かすためのAI技術は倍々の進歩を遂げ、ロボットの性能は飛躍的な進歩を遂げ、これらと引き換えに単純労働から、雇用の消滅が始まることでしょう。この流れは、2020年までに世界中で急拡大する。現に、GMは破綻が見えるまえの昨年の初頭にかなりのロボットを安川電機に発注している。多分、今回の一連の動きは計画的なものでしょう。経営危機を利用して社員の首を切り、労働力の穴埋めはロボットを導入する。というよりも、ロボットと労働者の入れ替えをする機会を以前からずっと窺っていたのでしょう。そこで、「百年に一度の不況」を上手く口実に使い、まんまとロボットと人間の入れ替えを進めて見せた。

エネルギー無料化を望む業界はまずIT産業、電気自動車=ロボット=家電産業でしょう。よく知られているようにGoogleはリニューアブルエネルギーの開発に積極的で、売電に一部門作るほど検討しているといいます。そして、投資家の次の注目は排出権取引に向いている。投資家が株を保有しているリニューアブルエネルギー関連の企業の太陽光発電なり風力発電なりの商品を、同じく経営権を握った企業に買わせ、それによって生まれる排出権を手に入れ、排出権市場で一儲けする。その資金を再び新産業への投資に再投入する。このプロセスを繰り返しが次のグリーンバブルの内実です。その結果、電気エネルギーの価格は下がり続け、ロボットをつかってロボットを作り、鼠算式に増えるロボットは経年劣化を越えるスピードで増産されつつ、主要な運用コストである電力価格が下がり続けることによって、爆発的に増加する。

グリーンバブルは単純労働市場と雇用を消滅させながらも、自身を継続させるために犠牲を先進国外に押し付けるでしょう。BRICsなどから経済危機を理由に雇用を引き上げ、そしてつなぎ的な雇用を設けたとしても、もう以前の水準まで単純労働市場の雇用は戻ることはありません。好景気それ自体が、雇用を消費してエネルギーとロボット、そして情報・演算能力を増大させるサイクルに入るからです。以前に書いたとおりです。この流れは、雇用という生活手段を不可能なものに変えていくでしょう。同時に全ての工業製品を低廉なものにし、情報処理のコストを引き下げ、ロボットの普及が多くの人を労働の苦しみや危険から開放していくでしょう。しかし、常識的に考えて、失業してお金が手に入らなくなれば、いくらエネルギーが安くても、いくら安いロボットがあっても商品が買えないのでは何の意味もありません。

もう、きっとこの始まってしまったプロセスは止められないでしょう。産業のロボット化は良心的な企業が雇用確保のために抗えば、真っ先につぶれるだけですし、推し進める企業にも消費者利益の大義名分がある。無論現在の経済危機で雇用をあきらめろというつもりは全くありません。断固雇用は守られるべきです。しかし、それはそれはあくまで短期の方策です。これから十年の間に起こるであろうことも見ないでおくべきではありません。現在の雇用はおそらく大企業の経営者にとっては中継ぎのものでしかないでしょう。ワークシェアリングも優れたものですが、どう考えてもいずれは恒久的な雇用の消滅にそなえた社会的なシステム作りが必要です。わたしはベーシックインカム的なものが必要になるとおもいますが、代替的な方策もありうるのかもしれません。しかし、ロボット化による雇用の消滅が深刻化するまで施策が放置される危険性は極めて高いでしょう。おそらく、皮肉にも人間は勤勉に働くべきで、ロボットが人間に取って代わるインセンティヴになるという理由で施策は放置されるでしょう。

まもなく、タックス・ヘイブンの取締りが始まるとの噂もありますし、おそらくは今私のしていることも、資本家が儲けていくための事前弁明になってしまうことでしょう。きっと、ベーシックインカムを保障するから、グリーンバブルで俺たちが大儲けして雇用が消滅しても、許してねという言い訳を用意するためでしょう。しかし、彼我の自由度・ケイパビリティの大きさは段違いのものとなり・・・。こうして、ただ生きるためには何も困らず、文化的貢献をしようと思えば、生活を気にせず参画でき、趣味的に工芸に参加して自己生産自己消費でき、老後もロボットがおり、高度にIT化された未来のただ同然の医療を受けることもできる。ただ趣味だけに時間を費やして生きることができる。しかし、社会や人類の趨勢に参加することだけは決してなく、自分の運命は与えられた範囲内でしか絶対に決定できないかもしれない世界が始まるのかもしれません。

そしてそれは先進国で始まるものの、低開発国では政治的大変化や内戦を含めた産業の急激過ぎる転換を押し付けられることとなり、そのプロセスに収入の限定された大衆は自らのエゴイスティックなポジションから走り出す経済的自由もない。ベーシックインカムが可能な国々は労働なくして生活が可能なまでに生産がロボット化された国となっているでしょう。そうでない国は内戦の果てに高度にロボット化された兵器で紛争介入を蒙るかもしれません。二酸化炭素を排出しないロボット戦車などで。

そしてもし、この一連のアイロニカルであるがゆえにあまりに自動的な流れにたいして多くの人がかくあるべきでないと考えるならば、この資本の性質によるプロセスはけして民主的なプロセスとは呼べないために、超資本主義のプロセスに正統性をもって反対することができるでしょう。そして、このことについて考えること自体がシンギュラリティをどう迎えることができるかという趨勢に大きな影響を与えることになるでしょう。つまり、どのようにシンギュラリティそのものであるポストヒューマン(エンパワーメントされた人間、もしくは強いAIあるいは同じことか)をデザインするかの決定プロセスに。

プロセスの民主化は、民衆の啓発なくしてはありえないため、愚かである自由(あらゆる能力開発に時間を奪われない自由)を制限する方向に傾くでしょう。Googleはこちらの立場にあると言われています。このばあい既に意味合いの変わった雇用をめぐる強力な能力主義の衝突を社会的にある程度受容する必要があるでしょう。プロセスの貴族制、つまり商品の購入を通じて生産力(ロボット≒ポストヒューマン)の形式を信任されたあるいは獲得された資本家によるデザインは、民衆の究極的な自己裁量権を奪う反面、エンパワーメントされた民衆同士の雇用の際限ない椅子取りゲームを緩和させるでしょう。この場合ポストヒューマンのデザインは押し付け憲法よろしく民主主義的正統性が薄く、洗脳されたことを自覚することができないという言葉すら生ぬるい、圧倒的なコンピューテーション能力を背景にした、ITによる民衆に対する対話による説得が行われるでしょう。そのプロセスは多分幸福なプロセスとして出現するものの社会主義的であり、おそらくファシズム的ですらあることでしょう。民主的なプロセスであれば、貴族制より遥かに多くの民衆がクリアランスの高いプロセスにコミットすることにより、良くも悪くもより深くポストヒューマンの動向を信任するでしょう。

どちらのケースも最終的に超人か強いAIかどちらを選択するかということには直結しないでしょう。しかし、人間のエンパワーメントであれば、誰が最初になるかが問われるでしょうし、強いAIを生み出すならば、だれがデザインするかが問われるでしょう。オバマは『何故未来は我々を必要としないか?』でシンギュラリティの危険性を提唱したビル・ジョイを新設の閣僚級役職であるアメリカ合衆国最高技術責任者に指名しました。おそらくシンギュラリティに対するオバマの態度を表明したものなのでしょう。この選択は、もっともなことだと思います。上手くすれば8年の任期です。歴史上最もラッダイズムの起こる可能性の最も高くなることの予想される時期ならばこそなのか、技術開発の速度をコントロールするためなのかはわかりませんが、少なくとも次の大統領がシンギュラリティがらみの問題意識をもっていることが確定したような気がして、少しホッとしました。おそらくアメリカは民主的プロセスに舵を切ったということなのでしょう。しかし、グリーンバブルの仕掛け人であるジョン・ドーアの推薦によるというあたりが、善悪というものの不確定性を示しているのかもしれません。

〈追記〉よくビル・ジョイ氏の指名については確認してみると、まだ不確定のようです。訂正してお詫び申し上げます。

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